第一章:プロフィールは「未来を見せる武器」
新宿・京王プラザホテル。
高層ビル群の谷間にそびえる老舗の巨塔。その3階にあるカクテルラウンジは、午後の光が大理石の床に反射し、副都心の欅並木をやわらかく照らしていた。
外の街は人と車でせわしなく動いているのに、ここだけは時間が止まったように穏やかだ。
だが、その静けさの中には独特の緊張が漂っていた。
ここはIBJをはじめ、多くの結婚相談所が利用するお見合い会場。プロフィールで互いを指名し合った男女が、初めて“現実”として対面する場所である。
プロフィールは通過点にすぎない。
本当の勝負はここからだ。
写真と文章で描いた理想像と、実物が一致しているか。
むしろそれ以上の印象を与えられるか。
それを試されるのが、このラウンジのテーブル席なのだ。
──その空気を切り裂くように、革靴の音が響いた。
「コツ、コツ」
ラウンジ全体が振り返る。
女性たちの呼吸が止まり、男性たちの背筋が一斉に伸びる。
軍神が現れたのだ。
黒のスーツに長い髪。真っ直ぐな姿勢、迷いのない歩み。
ただ歩いているだけで場を支配する男。
その存在感は、会場の空気を一変させた。
「利他的、これが全てだ」
低く通る声がラウンジを震わせる。
軍神の視線が、一人の30代男性に突き刺さった。
男は不安そうにスマホを取り出す。
そこには、暗い部屋で撮った冴えない自撮り写真。
軍神は一瞥して鼻で笑った。
「お前、写真はただの顔じゃない。未来を見せる武器だ。
こんな写真じゃ、女はお前の明日を想像できない。しかも同じ服装で今日来ている? それでは印象が埋もれる。“記憶に残らない男”は、いないのと同じだ」
男は顔を赤くし、うつむいた。
軍神はさらに畳みかける。
「指名されたからといって安心するな。
女はプロフィールと実物を無意識に照合している。
写真で期待させ、現実で落胆させた瞬間、心の扉は閉じる。
逆に写真以上の印象を与えられれば、そこから未来が動き出す」
男の胸に鋭い痛みが走った。
“写真を超えられる自分”にならなければ、この戦場では勝てないのだ。

第二章:お見合い開始3分で空気を制せ
ラウンジの奥から、女性が姿を現した。
緊張した面持ちで、テーブルに向かって歩いてくる。
男は息を呑み、心臓が早鐘を打った。
その背後から軍神が肩を叩いた。
「お前、最初の3分で空気を制せ」
「……どうすれば」
「読解をミスった時点で“戦”に負ける。
声のトーン、表情、沈黙の意味。全部読め」
男は必死に深呼吸し、女性の前で姿勢を正した。
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」
わずかに震える声。
だが、女性の表情がふっと和らぐ。
警戒心が解け、ラウンジに小さな安心の波が広がった。
軍神はグラスを傾け、静かに頷いた。
「それでいい。最初に安心を与えろ。
条件ではなく、空気で勝つんだ」
3分間の挨拶で未来が左右される。
それは軍神が繰り返し口にしてきた“鉄則”だった。

第三章:会話は七割聞き、三割で未来を描け
ぎこちない会話が続く。
男は焦り、沈黙を埋めようと必死に言葉を並べた。
その瞬間、軍神が低くつぶやいた。
「しゃべりすぎだ。七割は聞け。三割で未来を描かせろ」
女性が「休日は映画を観ます」と言ったとき、軍神の目が鋭く光った。
「今だ。未来を描け」
男は笑みを浮かべて口を開く。
「いいですね。もし一緒に行くなら、キャラメル派ですか? それとも塩派?」
女性が少し驚き、そして声を立てて笑った。
「キャラメルですね」
「じゃあ僕は塩で。シェアして食べましょう」
テーブルの空気が一気にやわらぐ。
軍神は静かに微笑んだ。
「それだ。未来を連想させる言葉が、女の心を動かす」

第四章:別れ際の一言で差をつけろ
会話は弾み、時間は終盤に近づいていた。
軍神が男に耳打ちする。
「最後に残す一言で差をつけろ。別れ際が勝負だ」
男は女性と共に出口に立った。
勇気を振り絞り、声をかける。
「今日の笑顔、正直、忘れられないかもしれません」
女性は一瞬驚き、それから頬を染め、恥ずかしそうに笑った。
軍神はわずかに口角を上げた。
「いい。比較の中で最後に残るのは、その一言だ」

第五章:真剣交際──未来+論理+感情
数度のデートを重ね、ついに真剣交際を告げる日が来た。
再び京王プラザホテルの夜景を望むラウンジ。
大きな窓から、新宿の灯りが星のように広がっていた。
軍神の声が脳裏で響く。
「未来を提示し、論理で安心させ、最後に感情で刺せ」
男は震える手を握りしめ、女性の瞳を見つめた。
「将来、こんな暮らしをしたい。……そして、君がいてくれたらと思う」
沈黙の後、女性はゆっくりと微笑み、静かに頷いた。
軍神はグラスを掲げ、低くつぶやいた。
「努力で勝てるのが、この戦場だ。お前はそれを証明した」
エピローグ
京王プラザホテルの外に出ると、夜風が二人を包んだ。
隣には、彼の言葉を受け入れた女性が寄り添っている。
軍神の姿はもうどこにもなかった。
だが耳の奥には、あの声が残っていた。
「利他的であれ。お前の行動は、誰のためになる?」
その言葉が、二人の未来を照らし続けていた。
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